ヘンリーフォード博物館/インディアン

バイクの〆はインディアン。

1900年代初頭に乱立したオートバイメーカーで1901年の創立以来ハーレー社と最後までしのぎを削ったインディアンですが1953年にその姿を消しました。
今まで紹介してきたメーカーのほとんどが1920年には姿を消していることを考えると、それでも会社としては十分長く続いたと思いますし、それを考えるとハーレー社は本当に凄い会社であることがわかります。
インディアンの倒産は経営不振が影響ですが品質競争でハーレーに勝てず、ミリタリーへの採用・不採用が明暗を分けた、と言うのが、若かりし頃に呼んだ雑誌に書いてあったような。
今回は有名どこのチーフやスカウト、フォアではなくてもっと古いモデルです。

初めは1904年モデル。
空冷単気筒1.75馬力
販売当時価210ドルだそうです。
ガスタンクは前にある筒だと思いますが今で言う一般のバイクの位置には無いので違和感を覚えます。
フロントフォークもサス無し、ライトも無しですね。
自転車に何とかしてエンジンとタンク系つけたって感じです。

次は1911年製。
空冷単気筒3.5馬力
26.96cui (450cc)
やっとバイクらしくなってきました。

1904年モデルもそうなんですが、なんか変だな~って思っていたらエンジンが後ろに倒れているんですよね。
同年代の他のバイクとか、今のバイクを見ても大体前傾なんですけどね。
なんでだろう。
この年式ではフロントフォークはイタバネサスになっています。

バイクは終わり。蛇足でもう少し続く

ヘンリーフォード博物館/ドイツ系メーカー2台

ちょっと特殊な車両を。

Hildebrand & Wolfmuller

1894年製。ドイツはミュンヘンの会社です。

水平2気筒、2.5馬力(240rpm)

90.8cui (1500cc) (そんなに大きく見えないけどなぁ。桁一個間違えているんじゃなかろうか)

で、何が特殊かと言うとエンジンレイアウトと後輪への動力伝達。

わかります?ピストンからコンロッドがそのまま後輪に直結。
要は蒸気機関車と同じなんです。
1900年代前のレシプロエンジン黎明期はこういった試行錯誤が繰り返されていたんでしょうね。
タイヤがフライホイールの役目をしているのでしょうけど回転に均一性が無かったんじゃないでしょうか。

次は DeDion-Bouton Petrol Tricycle

製作はドイツの Cudell & Company で、フランスの DeDion 社のライセンス下での生産だそうです。
1898年製。エンジン自体は1895年の設計だそうです。
空冷単気筒2.75馬力。 8.36cui (140cc)

見てのとおり三輪車です。トライクではなくてトライサイクルと言う呼び名。
シート後ろのタンクがクールじゃないですか。

もうちょっとだけ続く

ヘンリーフォード博物館/Cleveland & Evans

その名が示すとおりオハイオのクリーブランドのメーカー Cleveland Motorcycle Mfg. Company の作です。

この会社は1915年から1930年までの間バイクを作っていました。
この直4のエンジンは1925以降この会社の主製品だったそうです。
馬力が売りだったようですが、博物館の説明には何馬力という記載はありませんでした。
直4といえばインディアンの Model4 を思い出しますがフォアの初出も1928年ですので同級生ですね。

1928製、空冷直4、61cui (1020cc)
販売当事価格 385ドル

これのハンドルが無骨で良さげなわけでよ。
写真もって行ってワンオフで作ってもらおうかな。

スプリンガーはエクセルシオと同じように緩衝器内蔵タイプです。

次は軽快なイメージのある Evans です。

G.P.S Producs 社
1923年製 空冷2スト単気筒、1.5馬力
5.5cui (89cc)
販売当事価格 135ドル

ハーレーに乗った後にセカンドカーのオフ車に乗ると、やたら軽くてクククイィィっと曲がってくれるんですが、これもそんな感じでしょうか。
フロントがガーター、リアはリジット。
オフ社ベースにこんなカスタム作れそうですね。
燃費はガロンで150マイル・・・73km/l (ホンマかいな)、トップスピード35マイル(65km/h)だそうです。

続く

ヘンリーフォード博物館/Sears & Thor

メーカー名 Aurora Automatic Machinery Company から二台

この会社はもともと自転車用の部品屋として1886年に創業して、多くの部品メーカーにハブとかブレーキレバーなどの鋳造品・鍛造品を供給していたようです。
以降1900年に入りバイクパーツの生産も始めて、どうやらインディアンにもエンジンそのものをOEM供給していたそうです。
下記リンクに1902年にインディアンの生産キャパを補うために137台分のモーター(エンジン)を供給したとあります。

http://www.scripophily.net/auaumacode19.html

博物館の展示説明では1919年まで生産を続けていたそうです。
さて、展示のバイク
車名:Sears Auto-Cycle
1910年製、単気筒4馬力、30cui (502cc)
販売当時価格189ドル
エンブレムがないのがちょっと寂しい。

フロントサスのダンパー機構が独特ですね。
どちらかというとガーターフォークに近いと思います。
この時代のサス構造の試行錯誤が伺えます。

次が、Thor. トール。最近同名の日本車もでましたが、語源は北欧の神様かと。
うかつにも全体像を撮り忘れてしまったので下の一枚のみネットから入手。

1913年製, 空冷2気筒、7馬力。
販売当時価格175ドル
エンジン サイドバルブなんですがプッシュロッドのバネはいわゆるバルブスプリングなんでしょうね。
プラグキャップってのも無くてコードが直付けです。

これもハンドルの上にタンク???消火器?

このヘッドライト、ゾクゾクきませんか?どこかにワンオフで作ってもらおうかな。

続く

ヘンリーフォード博物館/エクセルシオ

次はハーレーではありません。

Excelsior, スタバそっくりのドトール系コーヒー屋と同じスペルですが、バイクはアメリカの会社なので発音は「エクセルシオ」が近いでしょうか。
同スペルで英車のエクセルシオールと言うメーカーもありましたが別物のようです。
このバイクについての情報を検索してみましたが、日本語サイトではヒットせず。英語サイトのみ見つけられました。(2017年更新:以下はリンク切れ)
http://www.khulsey.com/motorcycles/vintage_motorcycle_excelsior_x.html によると自転車屋「Exelcor supply company」として1876年、シカゴでの創業。1909年にバイク1号機(単気筒、革ベルトドライブ)を製作、1910年に社名を「Auto Cycle Motor Mfg. & Supply Co」に変更し、VツインエンジンのF型、G型の1000ccバイクを生産したとのこと。また初めて100マイル時の速度に達成したそうです。
さて、博物館の展示説明によると、1911年には Ignaz Schwinn に買収され、彼の自転車会社に吸収合併、エクセルシオブランドは1931年で廃業となったそうです。

Ignaz Schwinn について調べてみましたが、1895年に「Arnold, Schwinn & Company」を創業後、空気入りタイヤを発明したり、ビルトインキックスタンド(いわゆる今の自転車についている普通のスタンドでしょうか)を発明したりと相当メジャーな貢献をしながら1993年まで存続したものの倒産、現在は二回の買収を経てDorel Industries Inc と言う会社の所有になっているようです。

参考リンク:
http://www.ideafinder.com/history/inventors/schwinn.htm
http://www.dorel.com/

http://www.superxowners.com/history/index.htm

さて、前置きが長くなりましたが、 博物館では二台の展示。

1台目は1909年とのことですので、バイク屋として旗揚げする前の製造ですね。
空冷単気筒、3.5馬力で30,5cui (510cc)
販売当時の価格は225ドル
エックス+十字のエンブレムがかっこいいですね。

もう一台は、1920年式

ヘンリーフォードの個人的な友人から博物館への寄付だそうですが、この友人とは1927年にあの大西洋無着陸横断を果たしたリンドバーグその人です。

1920年に購入した後、ミネソタやウィスコンシン周辺を乗り回したそうで、飛行機の操縦教習でネブラスカにいた時もこれに乗っており、1927年の大西洋横断を達成したときもセントルイスで所有していたそうです。

「翼よ、あれがパリの灯だ」

当時の販売価格290ドル。

スプリンガーと同じリンク構造ですがロッカーアームが急傾斜、スプリングはシリンダに内蔵されておりすっきりした印象。

個人的にはバネ剥き出しのほうがメカメカしくて好きですがこれもかっこいいですね。

シートスプリングのレイアウトも独特ですね。

この角度だと沈み込んだ時に後ろに滑り落ちちゃうんじゃないでしょうか。

ヘッドライトもいい味を出しています。
ハンドル上のバレルは何でしょうかね?何かのゲージが付いていますけど。もしかしてバレルは灯油タンクでライトはランタン?

続く

ヘンリーフォード博物館/1907年ハーレー

二番目は1907年のハーレーです。

空冷単気筒、3馬力、28.64cui (480cc)、車重145lbs (66kg)
販売当時の価格 210ドルだそうです。

ハーレーダビッドソン社の創立が1903年ですので4年目のモデルですね。

※一号機は1904年の製造

ペダルも付いていますが、これは右側にあるチェーンでの動力伝達。
左側がエンジンから皮ベルトでの動力伝達のようです。テンショナーがいい感じですね。
リアスプロケ?の径もかなり大きい。
エンジンが非力で低速が回らないところは人力でカバーしたのでしょうか。
フロントフォークはこの年式からスプリング付きになったようです。

(スプリングは前側のフォークに内蔵されています。)

続く

ヘンリーフォード博物館/1941ナックルヘッド

ミシガンでも数少ない観光スポットともいえるヘンリーフォードミュージアムに行ってきました。
ヘンリー・フォードが当時の財力で様々な記念品を買い占めていた訳ですが、その集大成です。
展示物は車がメインなのですが産業機械、生活雑貨、飛行機、蒸気機関車、そして数は少ないですが二輪もあります。

ボチボチと紹介していきます。
まずは今も現役で目にする機会の多いナックル。
1941年製、40馬力、74cui。
発売当時の価格は1100ドルだそうです。
かなり程度の良いビンテージバイクはミュージアムグレード(博物館級)なんて呼ばれたりする訳ですが、これはまさにそれでしょうね。
オークションだったら5万ドル位の価格になるのではないでしょうか。

現物はミルウォーキーバレーチャプター、アンティークモーターサイクルクラブ・オブ・アメリカにてレストアとのこと。確かに使用感ありますし、オイル漏れもバッチリありました。